本橋時計店・本橋卓治さんに聞く、時計への思いと未来への展望!!

時計店を継ぐきっかけ
・時計店を継ぐに至った経緯や背景について教えていただけますか?
大学卒業してから、販売業や、飲食店を中心に働いていましたが、人と話をしてものを売ることで、喜んでもらえることに楽しみを感じていました。その後新宿にある大手の同業者の時計店で働き始め、アルバイトからはじめて10年くらい勤めていました。そして、これから仕事をどうしようかな?と思った時に、実家の時計店の建て替えの話があり、家業を継ぐことにしました。
・店を継ぐ際に、特に大切にしていた価値観やビジョンはありますか?
中目黒の駅前に古くからある店なので、お客さまには地元の人が多いです。まずは地元の人に時計にまつわることで喜んでもらいたいと思っています。特に最近は、電池交換をはじめ時計をその場で修理してもらえるところがなかなか無いため、地元の人に重宝がられる存在でありたいと思います。時計が止まってしまった、ベルトが切れてしまった、何か調子がおかしい、どんな理由であれ不具合を感じたら気軽にお店に足を運んでもらいたいと思っています。
時計に対する思い

・初めて手に入れた時計や、特別な思い出のある時計はありますか?
特別な思い出がある時計は、結婚の時に妻から買ってもらった「IWC ポルトギーゼ」です。この時計を選んだ一番の理由は、使いやすいから。これを今でも大切にしています。この時、私から妻へも「ジャガールクルト レベルデュオ」をプレゼントしました。
・現在取り扱っている時計の中で、お気に入りのものは何ですか?その理由も教えてください。
MARATHON(マラソン)社の時計です。機械のクオリティは高いですが、値段がリーズナブル。 デザインがシンプルで実務で使える時計です。当店は中古も多いですが、これは正規の新品を扱っています。地域に根ざすとは、こういう商品を売ることだと思っています。高くて有名な時計はインターネットでもどこでも買えますから。
・時計に対して特に魅力・興味を感じるポイントはどこですか?
時計は、単純に言えば「時間」を知るための道具ではあるのですが、しかしそれだけではなく、文字盤や形、装飾などの芸術的な要素が入ってきたり、狂わない、壊れないなどの精密的な要素が入ってきたり、その他さまざまな要素が入ってくるところに魅力を感じます。そして、時計の歴史に目を向けると、数千年前の日時計からはじまり、天体観測技術の発展などを経て、時を正確に刻むようになっていく時計の進化の過程についてとても興味があります。
店の運営に対する思い

・店を運営する上で、特に大切にしていることは何ですか?
一番大切にしているのは、お客さまがまずはどうしたいかということ、どうしてそうしたいと思っているのかを聞き出すことで、ここに重点を置いています。そして、お客さまの要求に答えることはもちろん、お客さまが考えている一歩上の提案をしたいと常に考えています。たとえば、中古の時計を販売する場合、重要となるのはコンディションです。お客さまも様々な情報をお持ちなのですが、時計店として時計のコンディションを見極めた上で、お客さまと相談して一歩上をいく提案をしたいと考えています。あくまでお客さま目線で、流行り廃りとかはあまり気にしていません。
・お客様とのやり取りの中で、印象に残った具体的な例を教えてください。
古いロレックス修理について実際にこんなことがありました。お祖父ちゃん、お父さんと大切に使われていたロレックスの時計なのですが、メーカーに問い合わせても、長年の修理などで純正ではない部品などもあったため修理ができないと言われ、他の時計店でも同じ理由で断られたそうです。長年の思い出を大切にされているのを感じたので、どうしても動くようにしてあげたいと思い、世界中から取り寄せ本橋時計店で修理をしました。時計が刻んできた思い出や歴史を次の代に引き継ぐことができ、お客さまも喜んでいただけたと思います。
・お客様に提供したい体験や、伝えたいメッセージがあれば教えてください。
実際にお店に来て、見て、触ってほしいです。インターネットの情報では、ケース径何mmなどといったことが書かれていますが、是非お店に来て腕に着けて感じてほしいです。厚みがあるとケース径が同じでもだいぶ印象が違います。腕に着けたときのフィーリングとか、相性、心地良さなどを感じてほしいと思っています。
時計店の未来や展望
・今後、店をどのように発展させていきたいと考えていますか?
腕時計の面白さ、腕時計をする楽しさを知ってほしいと思います。時計店は少し敷居の高い印象がありますが、親子や友達同士、恋人同士が気軽に入ってこられるお店にしたいと考えています。
・若い世代に時計を薦めるにあたって、特に意識していることはありますか?
顧客は男性が多いので、二十代くらいの自分の稼ぎで買う人に対しては、いつも着けられる時計を購入して欲しいと思います。Apple watchもかっこいいですが、アナログの時計を買い、毎日使い、愛着を持ってほしいと思います。そして、すこし余裕ができたら、その日の気分で時計を着替える、ファッション感覚で時計を楽しむようになってほしいですね。
・自分でつかっている時計の話をお願いします。
私は、だいたい2本の時計を使い分けています。
1つ目はベンラスのウルトラディープです、1960年代に作られた自動巻きのダイバーウォッチで、シンプルな見た目ですが視認性を追求していく中でも独特な針の形状が面白く、大きさのバランスもすごくフィットするので愛用しています。
2つ目はアランシルベスタインの1980年代に作られたクォーツ時計、針1本で24時間を表示するので、時間は大体わかる程度ですが、文字盤を昼と夜のイメージで2色に分けたり、独碌な形状の秒針など、なんとなくおおらかでのんびりしていてとても気に入っています。
ぜひ皆さんもお気に入りの時計を探しに来てください。

・この度にはインタビューにご協力いただきまして誠にありがとうございました。