〜変わりゆく中目黒と歩み続けて75年〜

本橋時計店について

創業時の風景

当店は、1951年に中目黒で創業しました。戦後の混乱が落ち着き、街が少しずつ復興へと向かっていた時期に、祖父がこの地で時計店を開いたのが始まりです。それから75年、知識と経験を積み重ね技術を磨き、時計を通じてどなたにも安心して喜んで心から満足していただけることを第一に、サービスの向上に取り組んでまいりました。そして地域の方々との長年にわたる絆に支えられながら、変わりゆく街とともに歩んでまいりました。

創業当時にさかのぼり少しそのお話しをさせていただきます。

ーー祖父母、本橋栄治・光子夫婦が創業ーー

創業者夫妻

当店の創業者は祖父の本橋栄治、そして祖母の光子です。

栄治は大正元年(1912年)千葉県勝浦市で生まれ、18歳(1930年)の時、子供の頃から興味があった時計の修理技術を身につけるために東京で働きはじめ、多くの時計修理専門店で技術を修得しました。光子は大正6年(1917年)に新潟県南魚沼市で生まれ、上京してデパートで働いていました。戦中の厳しい経済状況の中で二人は出会い、新しい生活を築くために心をひとつにして時計店の開業を目指し、1951年に中目黒で創業することになります。

開店当初、中目黒は地元の人々が集う小さな商店が軒を連ね、下町情緒が漂う静かな住宅街でした。戦後さまざまな物資が乏しい中、高価な時計は修理しながら使い続けるのが一般的で、高い技術を持った信頼できる時計店は地域の人々にとって必要不可欠でした。

当時の店内の風景

そのような中、栄治の丁寧な修理技術と光子の温かい接客が評判を呼び、次第に多くのお客様が足を運ぶようになります。お客様に寄り添い、長く愛用できる時計を提供することに情熱を注いでいたのでしょう、二人の誠実な人柄を背景に店は地域に支えられながら少しずつ繁盛し、今日まで続く基礎が築かれていきました。

高度経済成長期(1955〜73年)に入ると、中目黒の風景は大きく変わり始めます。1964年に東急東横線の中目黒駅に日比谷線が乗り入れると、新たな商業施設やマンションが次々と建設され、移り住む人も増え始めました。今は見事な桜並木になっていますが、大雨の度に氾濫していた目黒川の護岸工事に伴い桜が植えられ始めたのはこの頃からです。

当店はというと、1967年頃より2代目の父、健明が大学を卒業して時計メーカーに勤めた後に創業者と一緒に仕事をするようになります。創業者の知識や経験、技術を受け継ぎながら、時計、眼鏡、宝石の店頭販売のほか、職域販売や出張販売にも力を入れました。売上げは好調に伸び、地元の時計店として地域の活動に積極的に取り組んでいきました。

2000年代に入ると中目黒はカフェやアパレルショップが集まり始め、急速にトレンドの最先端をいく街へと変貌を遂げます。2002年に中目黒ゲートタウン、2009年に中目黒アトラスタワーが完成、2016年には駅の高架下が商業施設「中目黒高架下」として開業、地元住民のライフスタイルも大きく変わりました。それに伴い同業の時計店にも変化がみられ、目黒区内で約40軒あった時計店は、後継者や経営難などの理由で今では5軒ほどになりました。

そのような中、当店では、2012年から私が家業を継ぎ、時計店で働くことになりました。祖父の代から培ったノウハウや技術、また実店舗を持つ強みを活かしつつ、世の中の流れに沿ってネットでの販売も始めました。他では扱っていない商品を見た遠方からのお客様も増え、また海外からのお問い合わせも増えてきました。

現在の中目黒は、電柱地中化により歩道が整備拡幅された山手通りを多くの人が行き交い、桜の季節はもちろん緑の潤いがある目黒川沿いにたくさんの人が訪れ賑わいを見せています。昔ながらの商店街ではお祭りなどの行事やイベントが一年を通して各所で開催され、地元の人で活気を見せています。また、駅前では新たに再開発計画の話も進んでおり、中目黒の街はさらに魅力ある街並みになっていくことでしょう。

ーー時計を通じてお客様を笑顔にーー

現在の時計店の風景

このようにして中目黒の移り変わりとともに駅前の時計店として歩む中で、扱う商品や販売方法、サービスなどにおいてさまざまな変化を経てまいりましたが、いつも変わらず大切にしてきたのは「時計を通じてお客様を笑顔に」という思いです。

時計は、時間を測る合理的で便利な道具であるのはもちろんですが、それを使う人により、特別な意味を持つ存在になると思っています。大切な人から贈られた時計、家族から受け継いだ時計、人生の節目に購入した時計などは思い出や歴史の詰まった唯一無二の存在と言えます。それは修理・メンテナンスをすることにより、動きを止めることなく歴史を重ね、その価値は益々深まっていくことでしょう。

当店では、修理・メンテナンスを通して時計の価値と歴史を受け継ぐお手伝いはもとより、これから歴史を刻んでいく、お客様にとって特別な一本となる時計と出会うためのお手伝いをさせていただきます。

時計を「買う→使う→修理・メンテナンス→使う→譲る」、お客様が当店にお越しくださるタイミングはそれぞれ異なりますが、お客様に寄り添い、ご要望を丁寧に伺い、そのタイミングに一番ふさわしい、最適・最善の提案をさせていただきます。そして時計を通じてお客様に笑顔と喜びをお届けできるよう、今後益々サービスを充実させてまいります。

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